〜過去は変えられなくても、これからの人生は変えられる〜
はじめに|一冊の本が、私の心に光を届けてくれた
皆さんには、人生の中で忘れられない本がありますか?
何気なく手に取った一冊の本が、それまで当たり前だと思っていた考え方を変えてくれることがあります。
私にとって、その一冊が『嫌われる勇気』でした。
この本に出会うまでの私は、自分に自信が持てず、過去の出来事にとらわれ、人からどう思われるかを気にしながら生きてきたように思います。
幸せになりたい。
もっと明るく、前向きに生きていきたい。
そう願っているのに、心のどこかでは、
「どうせ私なんて……」
「私にはできない……」
と、自分自身の可能性を否定してしまうことがありました。
そんな私に、この本は大切なことを考えるきっかけを与えてくれました。
「過去を変えることはできなくても、これからの人生をどう生きていくかは、考えていけるのではないだろうか」
その考え方に出会ったとき、ずっと心の中に抱えていた重たいものが、少し軽くなったような気がしたのです。
今日は、この本との出会いを通して、私が感じたこと、そして少しずつ変わっていった心の変化についてお話ししたいと思います。

幼い頃の私が、ずっと心の中にしまっていた思い
私が子どもの頃、家庭は決して裕福ではありませんでした。
両親は生活のために毎日一生懸命働いていました。
私も小学生の頃から、両親の仕事を手伝って新聞配達をしていました。
今振り返ると、両親は両親なりに、家族の生活を守るために必死だったのだと思います。
でも、幼かった私には、そんな大人の事情を理解することはできませんでした。
ただ、寂しかったのです。
学校から帰ってきても、両親は仕事で忙しく、親子でゆっくり過ごす時間はあまりありませんでした。
一緒に笑ったり、お話をしたり、今日あった出来事を聞いてもらったり。
そんな当たり前のように思える時間が、私にはとても貴重なものでした。
もっと甘えたかった。
もっと話を聞いてほしかった。
もっと一緒に笑いたかった。
そんな気持ちが、心のどこかにありました。
一方で、勉強しなさい、片づけなさい、手伝いなさいと言われることはたくさんありました。
言われたことに従わなければ、手を上げられることもありました。
子どもだった私は、自分の気持ちをうまく言葉にすることもできず、ただ寂しさや悲しさを心の中にしまっていたように思います。
もちろん、今は両親の苦労も少しは理解できるようになりました。
でも、だからといって、幼い頃に感じた寂しさがなかったことになるわけではありません。
あの頃の私は、きっとただ、もっと甘えたかったのだと思います。
母親になった私が、何よりも怖かったこと
やがて私は結婚し、子どもを授かりました。
自分の家族ができたことは、本当にうれしく、幸せなことでした。
でも、同時に大きな不安もありました。
それは、私自身がちゃんとした母親になれるのだろうか、ということでした。
「私は子どもたちを幸せにしてあげられるのかな」
「自分が育ってきた家庭と同じようになってしまわないかな」
「子どもたちに、私と同じ寂しい思いをさせてしまわないかな」
そんな不安が、いつも心のどこかにありました。
子どもが生まれたからといって、すぐに立派な母親になれるわけではありません。
初めての育児は、わからないことばかり。
一生懸命やっているつもりでも、思うようにいかないことがたくさんありました。
子どもにどう接したらよいのかわからないとき。
思わずイライラしてしまったとき。
自分の対応が正しかったのか、後になって悩んだとき。
私はいつも、自分を責めてしまいました。
「私はいい母親じゃないのかもしれない」
「もっと上手に子育てできる人だったらよかったのに」
そして、いつの間にか、幼い頃の家庭環境が今の自分に影響しているのではないか、と考えるようになっていました。
「私がこんなふうに悩むのは、育ってきた環境のせいなのかな」
「もっと温かい家庭で育っていたら、違う自分になっていたのかな」
そんなことを何度も考えていました。
本当は、子どもたちを誰よりも大切にしたかったのです。
笑顔でいっぱいの家庭をつくりたかったのです。
子どもたちには、安心して甘えられる場所をつくってあげたかったのです。
でも、その思いが強ければ強いほど、思うようにできない自分が嫌になってしまうこともありました。
『嫌われる勇気』との出会いが教えてくれたこと
そんな私が出会ったのが、『嫌われる勇気』という本でした。
この本は、岸見一郎さんと古賀史健さんによる、アドラー心理学を紹介した書籍です。
青年と哲人の対話を通して、人間関係や幸せ、自分らしい生き方について考えていく内容になっています。
その中で、私が特に心を動かされたのは、過去の経験とこれからの人生についての考え方でした。
それまでの私は、過去の出来事が今の自分をつくり、これからの人生も決めてしまうように感じていました。
でも、この本を読んで、初めて違う考え方に出会いました。
過去の出来事そのものは変えられません。
つらかった経験が心に残ることもあります。
その影響は人によって異なり、簡単に乗り越えられるものばかりではありません。
それでも、私は思ったのです。
「過去の出来事だけで、これからの私の人生すべてが決まるわけではないのかもしれない」
その瞬間、心の中に小さな希望が生まれたような気がしました。
私は今まで、できない理由を過去の中に探していたのかもしれません。
でも、これからは、「どうしてできないのだろう」と悩むだけではなく、「どうしたらできるようになるのだろう」と考えてみたい。
そう思えるようになったことが、私にとって大きな一歩でした。
過去の自分を責め続けるのではなく、今の自分にできることを探してみたい。
そんなふうに思えるようになったのです。
つらかった過去を、無理に消さなくてもいい
幼い頃に感じた寂しさや悲しさは、今でも私の人生の一部です。
その出来事をなかったことにすることはできません。
でも、私は少しずつ、過去との向き合い方を変えていきたいと思うようになりました。
寂しかった経験があるからこそ、誰かの寂しさに気づけることもある。
悲しい思いをしたからこそ、同じように悲しんでいる人の気持ちに寄り添えることもある。
自信が持てずに悩んできたからこそ、今、自分を責めている人の気持ちがわかることもある。
もちろん、つらい経験をしたことがよかったとは思いません。
そんな経験をしなくても、幸せに生きられるのなら、それに越したことはありません。
でも、すでに経験してきたことを、これからの人生に生かすことはできるのかもしれません。
そう考えられるようになってから、私は少しずつ、自分自身を受け入れられるようになりました。
昔の自分も、今の自分も、どちらも私です。
うまくできなかったことも、悩んだことも、遠回りしたことも、全部含めて私の人生です。
そして、これからの人生には、まだたくさんの可能性がある。
そう思えるようになったことが、私にとって何より大きな変化でした。
子どもと一緒に、私も母親として成長してきた
考え方が少しずつ変わっていく中で、子育てに対する思いも変わっていきました。
以前の私は、母親なのだから、しっかりしなければいけないと思っていました。
子どもにきちんと教えなければいけない。
悪いことをしたら厳しく叱らなければいけない。
弱音をはかない母親でいなければいけない。
でも、あるとき気づいたのです。
子どもが生まれたとき、私も母親としてスタートしたばかりだったのだと。
子どもが初めて歩けるようになるまで、何度も転びながら成長していくように、親だって何度も悩み、迷いながら成長していくのではないでしょうか。
初めての子育てで、何もかも上手にできる人なんて、きっといません。
子どもが泣けば、どうして泣いているのだろうと悩みます。
言うことを聞いてくれなければ、どう接したらよいのだろうと考えます。
失敗すれば、次はどうしたらよいのだろうと悩みます。
そんな毎日の繰り返しの中で、親も少しずつ成長していくのだと思います。
私も、子どもたちにたくさんのことを教えてきたつもりでした。
でも、今振り返ると、子どもたちから教えてもらったことの方が、ずっと多かったのかもしれません。
人を思いやる気持ち。
小さな成長を喜ぶ幸せ。
当たり前の日常が、どれほど大切なものなのか。
そして、誰かを心から大切に思うことの喜び。
子どもたちは、私にたくさんの大切なことを教えてくれました。
「ママの子に生まれてきてよかった」その言葉がくれた幸せ
私は3人の子どもを育ててきました。
3人目の子育てを通して、ようやく自分自身も少しは母親として成長できたのかな、と感じられるようになりました。
悩むこともありました。
失敗することもありました。
もっとこうしてあげればよかった、と後悔することもありました。
それでも、そのときの自分にできることを、一生懸命やってきたつもりです。
そして、子どもたちが私に、こんな言葉をかけてくれることがあります。
「ママの子に生まれてきてよかった」
その言葉を聞くたびに、胸がいっぱいになります。
あんなに自信がなかった私。
自分はダメな母親なのではないかと、何度も悩んできた私。
子どもたちを幸せにしてあげられているのだろうかと、不安だった私。
そんな私にとって、この言葉がどれほど大きな喜びだったことでしょう。
子どもたちにとって、私は完璧な母親ではなかったと思います。
でも、子どもたちがそう思ってくれているのなら、私なりに一生懸命歩んできた子育ての日々にも、ちゃんと意味があったのだと思えるのです。
そして、私も子どもたちに伝えたいです。
「私の子どもに生まれてきてくれて、ありがとう」
あなたたちがいてくれたから、たくさんの喜びを知ることができました。
あなたたちがいてくれたから、悩みながらも、少しずつ成長することができました。
過去の自分にも、今なら伝えたい言葉がある
もし、幼い頃の自分に声をかけられるとしたら、今の私は何と言うでしょうか。
きっと、こう伝えたいと思います。
「寂しかったね」
「本当はもっと甘えたかったよね」
「たくさん我慢してきたんだね」
そして、もう一つ。
「でも、これからの人生には、たくさんの幸せが待っているよ」
そう伝えたいです。
あの頃の私は、未来の自分が3人の子どもの母親になり、子どもたちからこんなに幸せな言葉をもらえる日が来るなんて、想像もしていなかったと思います。
人生には、つらいことも悲しいこともあります。
自分ではどうにもできないこともあります。
でも、だからといって、これから先の人生まで、すべて悲しいものになるとは限りません。
新しい出会いがあるかもしれません。
誰かの優しさに救われる日があるかもしれません。
思いがけない喜びに出会う日があるかもしれません。
そして、いつか過去を振り返ったとき、今とは違う気持ちで自分自身を見つめられる日が来るかもしれません。
私は、そんな希望を大切にしていきたいと思っています。
自分の心の持ち方が変わると、見える景色も変わってくる
『嫌われる勇気』との出会いは、私にとって、自分の心のあり方を見つめ直すきっかけになりました。
以前の私は、嫌なことがあると、そのことばかり考えてしまうことがありました。
悲しい気持ちのときには、周りの景色まで悲しく見えてしまう。
人と接することさえ嫌になり、自分の世界に閉じこもってしまう。
そんなこともありました。
でも、少しずつ考え方が変わる中で、日常の小さな幸せにも目を向けられるようになってきました。
誰かが笑顔で挨拶してくれたこと。
家族と何気ない会話ができたこと。
困っているときに、誰かが優しくしてくれたこと。
当たり前だと思っていた毎日の中にも、こんなにたくさんの幸せがあるのだと感じるようになりました。
もちろん、心の持ち方だけで、すべての悩みが解決するわけではありません。
悲しいときは悲しんでもいいし、つらいときは誰かに頼ってもいいと思います。
それでも私は、自分の心を少しずつ大切にしていくことで、以前は気づかなかった幸せにも出会えるようになったと感じています。
おわりに|これからの人生は、自分らしく生きていきたい
私は、今までの人生で、失敗したことも、悩んだことも、後悔したことも、数え切れないほどあります。
でも、今は思うのです。
完璧な人生でなくてもいい。
誰かと比べて、立派な人生でなくてもいい。
大切なのは、自分自身の人生をどう受け止め、これからどう歩んでいきたいかということなのかもしれません。
『嫌われる勇気』は、私にそのことを考えるきっかけを与えてくれました。
過去を変えることはできません。
でも、これからの人生には、まだ出会っていない幸せがあります。
まだ知らない自分の可能性があります。
そして、これから出会う人たちとの新しいつながりもあるかもしれません。
私は、これからの人生を、もっと自分らしく、もっと大切に生きていきたいと思っています。
人と比べるのではなく、自分自身の成長を喜びながら。
できなかったことを責めるのではなく、できるようになったことを大切にしながら。
そして、家族や周りの人たちとの心のふれあいを大切にしながら。
人生は、過去だけで決まるものではない。
今日という日から、また新しい一歩を踏み出してもいい。
私は、そう信じて、これからも歩んでいきたいと思います。
自分の気持ちを大切にしながら、自分のペースで、少しずつ歩んでいけたらいいですね。
そして、いつか自分の人生を振り返ったとき、「いろいろあったけれど、私の人生も幸せだったな」と、心から微笑める日々を重ねていきたいと思います。
続けて読んでいただきたいお話
『嫌われる勇気』から学んだことを、私自身の経験とともにお伝えしています。
次のお話では、人間関係の悩みについて考えてみました。
今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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